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DR.WEIL’S GRACEFUL DAYS
ワイル博士のグレイスフルデイズ

グレイスフル(Graceful)
「潔い」「優雅な」「気品のある」などの意味。ワイル博士が語る、人に本来備わっている自然治癒力や免 疫力がいきいきとはたらくための潔く優雅な日々の送り方。

アンドルー・ワイル

医学博士。1942年アメリカ・フィラデルフィア生まれ。アリゾナ在住。アリゾナ大学医学校・統合医療プログラム部長。西洋医学と代替医療を統合する「統合医療」の第一人者。『癒す心、治る力』『ヘルシーエイジング』『ワイル博士のうつが消えるこころのレッスン』(以上角川書店)など著書多数。
オフィシャルホームページ:http://www.drweil.com/



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ウォーキングの健康効果


(翻訳 上野圭一)

わたしは長年、ヘルシーなライフスタイルに貢献する理想的な方法として、ウォーキングを奨励してきました。たえずエアロビック(有酸素)な運動を必要としている身体の欲求を満たすには、ウォーキングがベストの方法だと考えるからです。ただ大股で歩くというシンプルな活動を習慣とするだけで、疲労の回復、気分の高揚、適正体重の達成と維持、骨の強化、免疫の強化、可動性の増強、機敏な精神活動の維持に効果があり、糖尿病や心臓病のリスクを大幅に低下させます。

それだけでも大した効果ですが、それでもまだ歩く気にならないという運動嫌いの人には耳寄りのニュースがあります。最新の医学専門誌『ランセット』によれば、毎日15分間、大股で歩くような中程度の激しさの運動を習慣としている人たちは、そうした習慣のない人たちにくらべて、突然死のリスクが14パーセント低く、平均余命が3年長いという研究結果が出たそうです。その研究をした科学者グループは、運動時間をさらに15分延長するだけで、がんのリスク低下をはじめ、長期にわたる健康増進効果が促進することも確認しています。

ウォーキングはフィットネス運動のなかでもひときわユニークなものです。特別な技能も訓練も必要としません。だれでも歩きかたは知っています。戸外でも室内でもできます。家の近所や公園を歩いてもいいですし、ショッピングモールやビルの廊下を歩いてもいいでしょう。ウォーキングは安全であり、エアロビック運動としては衝撃が少なく、したがって負傷のリスクも少なくてすみます。必要な道具は自分の足に合った靴だけです。良質なシューズを選んで、すり減ったら必ず新しいものに代えてください。

わたしは先ごろ、新しい運動靴の開発に手を貸しました。足とくるぶしの機能を正しく保護し、全身の姿勢とバランスの向上に寄与する、履き心地のよい靴ができました。詳細は「ワイル統合フットウエアコレクション」のウェブサイト(www.weilbeing.com)をご覧ください(同社から得る権利使用料など、税引き後のわたしの収益は全額、非営利組織「ワイル財団」に寄付され、訓練・教育・研究をつうじて統合医療の発展を支援するために使われています)。

ウォーキングによる健康効果をじゅうぶんに享受するためには、長期にわたって持続的に行なう必要があります。とぎれることなく、ほぼ毎日、こつこつと歩きつづけなくては効果を得ることができないのがウォーキングなのです。

最初はゆっくりでもかまいません。約5キロを45分ほどかけて、少なくとも週に5日は歩いてください。姿勢を正して、大股で、バランスよく歩く。両腕を足の動きと反対方向にふりながら歩く(たとえば、左足を前に出すときは右腕を前に、右足を前に出すときは左腕を前にふる)。必要に応じて、スキー用やウォーキング用のポール(ストック、つえ)を使うのもいいでしょう。

なかなか実行に移せない人は、ウォーキングパートナーを探していっしょに歩くか、ウォーキングクラブに入会するといいでしょう。自分でクラブを結成してもいいです。ウォーキングの効果のほかに、仲間とつきあうという健康効果も得られますし、ウォーキングがますます楽しくなって、よい習慣が長つづきすることにもつながります。

人間のからだは動くようにつくられています。そして、ウォーキングはからだの欲求を満たすための最良の方法のひとつです。歩くことを習慣にしましょう。無理のないペースを維持して歩きつづけ、道端に花をみつけたら、遠慮することなく立ち止まって、胸いっぱいにその芳しい香りをかぎましょう。