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DR.WEIL’S GRACEFUL DAYS
ワイル博士のグレイスフルデイズ

グレイスフル(Graceful)
「潔い」「優雅な」「気品のある」などの意味。ワイル博士が語る、人に本来備わっている自然治癒力や免 疫力がいきいきとはたらくための潔く優雅な日々の送り方。

アンドルー・ワイル

医学博士。1942年アメリカ・フィラデルフィア生まれ。アリゾナ在住。アリゾナ大学医学校・統合医療プログラム部長。西洋医学と代替医療を統合する「統合医療」の第一人者。『癒す心、治る力』『ヘルシーエイジング』『ワイル博士のうつが消えるこころのレッスン』(以上角川書店)など著書多数。
オフィシャルホームページ:http://www.drweil.com/



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「つきあい」で健康になる


(翻訳 上野圭一)

わたしたち人間は、家族や部族、地域社会のなかで生きることに向いている、きわめて社会的・共同的な生き物です。ひとりになって内省する時間も必要ではありましょうが、孤独になる時間と他者とのつながりをもつ時間とのバランスを欠いてしまうとき、人はしばしば病気になるものです。
その病気はまずスピリチュアルなレベルで生じ、つぎに抑うつや怒りといった感情のレベルに移り、最後は肉体レベルに、とりわけ免疫活動の低下や神経系のアンバランスというかたちであらわれます。

加齢とともに病気がちになっていく人の多くが有意義な社会的つながりを築くことに失敗した人たちであるということは、多くの科学的研究が明かにしているところです。たとえばマッカーサー財団が行なった研究では、よくからだを動かすという習慣に加え、生涯をつうじて社会的および知的な関係を習慣づけている人ほど健康な老後を過ごす確率が高いことを立証しています。

幸いなことに、愛する家族と信頼する友人たちにかこまれて暮らしているわたしは、困難な問題に直面して悲観的になったときも、他者との親交のなかに慰めを見いだすことができます。さらに感謝すべきことに、わたしのそばには日々「つながりの力」を思い出させてくれる、天分にめぐまれたヒーラーがいつもいてくれます。おかげで、わたしは自分が世にあることのありがたさを日々再認識することができます。そのすぐれたヒーラーは二匹のイヌです。

その二匹のローデシアンリッジバック(ライオン狩りに使う大型アフリカ犬)との絆は特別なもので、ことばでは表現し尽くせません。わたしは彼らにヘルシーな食事ときれいな水と寝床を与えてやるだけですが、彼らはわたしを笑わせ、幸せな気分にし、ときには怒らせてくれます。でも、彼らがつねに与えてくれるのは無条件の愛です。彼らはまた、ある神秘的な方法でわたしの感知能力を高めてくれ、いっしょに遊びたい、遠出をしたいなど、そのときどきの欲求をわたしに的確に伝えてくれるのです。

コンパニオンアニマルを飼うことは飼い主の健康度を高め、病気になっても治りが早いということを裏づける研究もあります。わたしもそのとおりだと思います。ペットを飼うことは大きな責任を負うことでもありますが、そのリスクを冒す価値はじゅうぶんにあり、彼らが与えてくれるものの大きさは計り知れません。

たとえあなたが家族や友人などのコミュニティとは無縁な人であっても、健全に孤独を癒す方法はいくらでもあります。その最たるものは奉仕活動です。報いを期待することなくあなたの時間とエネルギーを捧げて他者の幸福に寄与する。その行為によって、あなたは「いのちの相互のつながりあい」の生きた見本を創造することができます。しかも、その過程で、新しい友人知人ができるかもしれません。

やや困難な行為ではありますが、あなたの利己的な傾向を自分自身で打ち砕くには最適なもうひとつの方法は「人を許す」ことです。それまで許せないと思っていた人を許すことに成功したら、失った友人をひとりとり戻したことになります。たとえ成功しなくても、自分のなかのこころの痛みをいくらかでも軽減したことで、安らぎを得るという経験をしたことにはなります。すでに亡くなってしまった人たちを許す訓練をすることも可能です。というのも、あなたはいまだにその人たちのことを「許せない」と思いつづけ、そのことでこころに痛みを感じているのですから、こころのなかでその人たちと内的な対話をつづけ、ついには「許し」にいたることは可能なのです。

健康であるということは、バランスがとれ、全体の一部になっているということです。
「バランス」も「全体」も、家族・友人・人類・愛する仲間たちとのつながりを必要とするものです。抗炎症ダイエット、呼吸法の訓練、規則的なフィットネス運動などを実行している人でも、もし「つながり」をもたなければ、最適な健康を得ることはできません。人は他者との深い関係を育むことで癒され、そんな関係が、ありうべきよりよい世界へと向かう共通基盤になるのです。