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DR.WEIL’S GRACEFUL DAYS
ワイル博士のグレイスフルデイズ

グレイスフル(Graceful)
「潔い」「優雅な」「気品のある」などの意味。ワイル博士が語る、人に本来備わっている自然治癒力や免 疫力がいきいきとはたらくための潔く優雅な日々の送り方。

アンドルー・ワイル

医学博士。1942年アメリカ・フィラデルフィア生まれ。アリゾナ在住。アリゾナ大学医学校・統合医療プログラム部長。西洋医学と代替医療を統合する「統合医療」の第一人者。『癒す心、治る力』『ヘルシーエイジング』『ワイル博士のうつが消えるこころのレッスン』(以上角川書店)など著書多数。
オフィシャルホームページ:http://www.drweil.com/



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「身体運動と健康」 ストレスを軽減し、免疫系を強化、軽度のうつ状態を改善


(翻訳 上野圭一)

分別のある適度な運動は、たとえば減量といった特定の目的を果たすためにももちろんですが、その人にとっての最適な健康を維持するために、大きな恩恵をもたらすものだと、わたしは確信しています。
とりわけ、心臓血管系の健康を維持するには規則的な運動習慣が欠かせません。ウォーキングなど、だれにでもできる運動が心臓の強化、「善玉」コレステロールの増加、「悪玉」コレステロールの低減、からだの隅々までへの酸素の供給などに役立ち、体調を整えてくれます。
毎日の運動習慣はまた、カロリーを燃焼させ、エネルギーとスタミナのレベルを高め、ストレスを軽減し、免疫系を強くすることによって、体重のコントロールに重要な役割を果たしてくれ、軽度のうつ状態を改善してくれます。
ただし、注意をしなければならないことがあります。仕事で座業ばかりしている人、これまでに運動をしたことがない人は、念のために、医師による健康診断を受けてからはじめてください。

健康維持のための運動にはエアロビック(有酸素運動)とウエイトトレーニングの2種類が必要です。エアロビック運動とは脈拍や呼吸数を高める運動のことで、ほとんどの人が最初に行なう必要のあるものです。毎日、なにか汗をかくような、エアロビックな運動をつづけてください。エアロビック教室で教えているものだけではなく、ランニング、早足のウォーキング、ハイキング、サイクリング、スイミング、クロスカントリースキーから縄跳び、ダンス、階段を昇るなど、エアロビック運動はいくらでもあります。

畑仕事や庭仕事、家事などもエアロビック運動になりますし、庭を横切ってメールボックスに郵便物をとりに行くことでさえエアロビック運動になりえます。ようするにその活動でどれだけエネルギーを使ったかでエアロビックな効果が決まるのです。つぎつぎにいろんな種類の活動をしていけば、飽きずに運動をつづけることができます。 エアロビックな活動から最大の効果を引きだすためには、ほぼ毎日、30分から45分ほど動きつづけることが大切です。あまり形式ばらず、エレベータを使わずに階段を昇る回数をふやすとか、目的地の手前に車を停めて、あとは歩いて行くとかを習慣にしていけばいいのです。 一方、高齢者が骨を強くし、筋肉や関節の可動性を高めるためには、ウエイトトレーニングのような筋肉に負荷をかける運動も重要になります。最近の研究では、90歳代の人でも、ウエイトトレーニングで筋肉を強化し、歩行速度を高めることが可能であると判明しています。筋肉に負荷をかける運動は骨密度を高めて、骨粗鬆症を予防することにも役立ちます。この運動はまた、筋肉量をふやして最適な体重を維持することにも役立ちます。筋組織の代謝が活発になればなるほど、摂取カロリーの燃焼量もふえます。

筋肉に負荷をかける運動は、少なくとも週に2回はつづけてください。初心者には、できれば信頼できるトレーナーにつくことをおすすめします。すぐれたトレーナーなら、筋肉や関節を傷めずに、あなたの望むとおりの効果が引きだせるような指導をしてくれるはずです。 筋肉量をふやす効果があるなどといって、プロテインの粉末やアミノ酸の錠剤、高価なハーブ系のサプリメントなどをすすめる人には注意してください。適当なトレーナーがみつからない人は、ガイドブックを参考にして練習をはじめてください。 最初のうちはフィットネスのために時間を捻出するのがむずかしいと感じるかもしれません。でも、規則的につづけていきさえすれば、すぐにからだでその効果がわかってきます。なんともいえない爽快感、エネルギーの高まりを感じはじめ、こつがつかめてくるはずです。一度、実行しはじめれば、運動をすることが楽しくなり、運動をしない日にはなにか物足りなく感じるようになるでしょう。